【カメラ入門講座(3)】 JPEGとRAW :写真の記録形式
目次
はじめに
みなさん、こんにちは。
カメラマンの野口悠治です。
この「カメラ入門講座」は、初心者をベースに、もっとうまくなりたいという知識欲ある方に向けて、初心者でも分かりやすい表現を心がけて記事の執筆をしています。皆さんの写真活動がより豊かになれば僕としても嬉しく思います。
第3回目のテーマは「 JPEGとRAW :写真の記録形式」です。
デジタルカメラで撮影する時に、選ぶ項目として存在するのが「JPEG」(読み:じぇいぺぐ)と「RAW」(読み:ろう)というものがあります。初期設定では「JPEG」になっていることがほとんどだと思いますので、特に変更していないという人もいると思います。そこで、改めてJPEGとRAWについて説明をしたいと思います。
JPEGとRAWで画像としての性質が異なるため、運用上の違いが発生します。僕においては、連写や即時性を優先するならばJPEG記録をするし、色の再現性や事後の画像調整を優先するならばRAWで撮影するようにしています。
JPEGとRAWの画像としての違い
カメラにおける JPEGとRAW の違いを分かりやすく説明するとすれば、JPEGはデジタル写真制作における完成品の一種であり、RAWとはその途中の生データのことを指します。RAW形式で撮影した場合、作成されたデータは未完成な状態なので、別途作業によって完成に導く作業が必要となります。ここでキーワードになるのが「現像」という用語です。デジタルカメラにおいて現像というのは、撮像素子によって記録されたデータを写真として利用できるように整えることを指します。カメラの設定においてJPEGかRAWかを選択することは、この現像という処理をカメラに任せるのか、別途自分でやるのかという選択だと言い換えることができます。
デジタルカメラにおいて保存するファイル形式にJPEGを選択した場合、シャッターを押すと、撮像素子によって取得した情報を用いて、カメラ内で現像処理がされ、色や明るさの調整をした上で、メモリーカードにJPEG形式のデジタル画像が保存されるという仕組みになっています。一方、RAWはそのままでは撮像素子による生データが未現像の状態で記録されるため、ご自身のパソコンなどで現像(「RAW現像」と呼ばれる)の作業をおこなう必要があります。このRAW現像においては、色や明るさをはじめ様々なパラメーターを大幅に変更できます。そのため、撮ったままの画像を用いたい場合はJPEGで保存することが推奨されるし、パソコン等で後から調整作業を加えたい場合はRAWで保存することが推奨されます。
もう少し細かく見ていきましょう。まず、JPEG形式ですが、JPEGとRAWの大きな違いはデータ圧縮にあります。JPEGは圧縮ファイルの一種であり、RAWは非圧縮ファイルの一種です。特に、JPEGは規格に基づくデータ圧縮がされるという点が非常に優秀で、広く使用されています。わざわざJPEG形式にするのには、以下の特長を取得させたいためです。
JPEGの第1の特長として、大幅な圧縮が可能ということが挙げられます。今日のように、様々な用途で画像が用いられ、データの転送が頻繁にされているという状況であるため、そのデータ容量をいかに小さくするかということと、同時に画質をいかに保つのかということの重要性は、共有する価値観であるでしょう。デジタル画像データはある程度規則性のある領域があり、その特性を利用して圧縮をかけるという手順になっています。この圧縮技術のひとつをJPEGと呼び、そのまま画像の形式の呼び名にもなっています。ただし、圧縮するといっても、人間の目では「劣化した」と認識できないような仕組みを採用して、データの圧縮をおこなっています。
JPEGの第2の特長としては、非常に汎用性が高いということが挙げられます。これは世界的に制定された規格に基づいているためです。規格というのはいわば工業的なルールであり、このような規格が存在し、それぞれのデバイスやソフトが準拠するように設計されているため、カメラでもパソコンでもスマホでもほぼ同一の見え方や使い方ができるということになっています。
次に、RAW形式ですが、先ほども述べたように非圧縮ファイルのひとつです。カメラ内現像を経ていないので、可能な限りの多くの情報を持っているデータ形式です。光というものはアナログの信号(一連の情報)でありデータ処理の上で使いづらいので、デジタル信号に変換する必要があります(これを「A/D変換」と呼びます)。通常使用されるJPEGにおいては8bitの光の諧調表現(グラデーション)となりますが、RAWと呼ばれる大容量の記録形式には14bitや16bitなどで記録ができ、光の諧調が非常に細かくなっていきます。そのようにすると、デジタル信号でありながらも、まるでアナログ信号であるかのように滑らかにデータを記録できるという点がRAWの重要な点です。ちなみに諧調を豊かにしようとすればするほどRAWのデータ容量は膨大になっていきます。JPEGが8bitなのに対してRAWでは14~16bitほどなので、どれほど色の情報を多く持っているのかはなんとなく分かるかと思います。このように膨大な量のデータを抱えることができる点で、後から画像調整を加える場合はRAWを選択することが推奨される理由です。
JPEG:連写や即時性を優先
では、どのような場面においてJPEGという記録方式が優先されるかを書いていきたいと思います。当方の場合においては、機動性が重視される場面でJPEGという選択がされています。以下に例をあげていきます。
第1に、連写を多用したい場合です。これにはカメラがメモリーカードにデジタル画像データを保存するまでのフローが関係します。カメラが撮影したデジタル画像データは直接メモリーカードに書き込まれるのではなく、一旦はカメラ内の「バッファメモリー」と呼ばれる領域に保存され、必要な調整が加えられた上で、その後順番にメモリーカードへ保存されるという仕組みになっています。このバッファメモリーにも容量があり、それほど多くを一時保存することができません。このバッファメモリーが満たされてしまうと、一時的にカメラは撮影をすることができない状態になります。これは非常に困ります。そのため、大容量の画像となってしまうRAWでの選択は避けてJPEGを選びバッファメモリーへの負荷をコントロールし、カメラの連写性能を引き出すという選択をとるのです。
第2に、納品の即時性が重視される場合です。撮影後すぐにその写真をSNS等で使用したい場合などが代表的です。このような条件の場合、RAW現像するという時間がないので、最初からJPEGで撮影するという方法を採用します。JPEGで撮影し、そこのメモリーカードをそのまま顧客に預ける(またはコピー)という流れが典型的だと思われます。そのため、この選択は顧客の事情に応じた選択です。
RAW:色の再現性や事後の画像調整を優先
撮影後にRAW現像という作業が別途発生してしまいますが、それでもRAW撮影する意義のある場面があります。
それは、大容量の豊富なデータを用いて編集(RAW現像)して、良い写真を作るということが優先される場合です。どのような物事でも同じことですが、完成品というものは、小さな積み重ねがまとまったものです。写真も同じで、色や明るさの僅かな違いをいかに積み重ねていけるかによって品質は異なってきます。この小さな積み重ねを自身の手によって追い込んでいくことが、良い写真に繋がっていくと思います。
それを可能とするのは、前述のとおり、このRAW形式のデータには可能な限りの大容量の情報が詰め込まれているからです。自身によって手を加えられる範囲が非常に広いのです。また、自身の写真の技能をより高めていこうと考えた場合、RAWで撮らないと見えてこない領域も存在します。具体的には、RAW現像によって様々なパラメータ―の調整を自身の手によって繰り返すことによって、何が自分の目指す先なのか、撮影時の設定は妥当であったのか考えることにあります。ちなみに、残念ながら、JPEG形式では既にデータ圧縮がされた形式であるため、事後的に編集することには適していません。
ちなみに、RAWとは未現像の生データのことと上述しましたが、RAW現像においては元々のRAWデータはそのままにして現像作業をおこなうという手順を採用しているため、やりなおしがききます。それだけでなく、年月を経ることにつれて、今後写真が良くなる可能性も秘めています。例えば、自身の現像テクニックが向上した場合、以前撮影したものであっても、再度RAW現像をすることによってそれまでとは違った写真に更新することができる可能性があります。また、現像ソフトの機能向上などによって、これまでできなかった現像作業が可能になることもあるでしょう。それらのような時に、未現像の生データを持っているというのは、有利に働く場合があると思います。
また、現像の作業は基本的にはパソコンを用いておこなうことが一般的ですが、最近はタブレットやスマートフォンでも対応できるものが現れています。少しずつであるが、RAW現像の敷居も低くなってきているので、試してみてもいいでしょう。
おわりに
ここまでお読み頂いてありがとうございました。
今回のカメラ入門講座においては、「JPEGとRAW:写真の記録形式」について説明をしました。
撮影したカメラやメーカー純正閲覧ソフトでしか見てこなかった方には、JPEGとRAWはあまり関心を持ってこなかった方もおられるかもしれませんが、この2つはかなり異なるものです。
ぜひ必要に応じて使い分けてみてください。
定期的にこのシリーズは掲載していきますので、またお読み下さると嬉しいです。 今後ともよろしくお願い致します。